人類はコロナウイルスといかに闘うべきか――今こそグローバルな信頼と団結を (ユヴァル・ノア・ハラリ=著) /ETV特集「緊急対談 パンデミックが変える世界~海外の知性が語る展望~」/ スマホは「監視社会」の道具になる? アフターコロナの世界か?!

人類はコロナウイルスといかに闘うべきか――今こそグローバルな信頼と団結を (ユヴァル・ノア・ハラリ=著) /ETV特集「緊急対談 パンデミックが変える世界~海外の知性が語る展望~」/ スマホは「監視社会」の道具になる? アフターコロナの世界か?!


(歴史学者・哲学者。世界的ベストセラー『サピエンス全史』、『ホモ・デウス』、『21 Lessons』著者)



多くの人が新型コロナウイルスの大流行をグローバル化のせいにし、この種の感染爆発が再び起こるのを防ぐためには、脱グローバル化するしかないと言う。壁を築き、移動を制限し、貿易を減らせ、と。だが、感染症を封じ込めるのに短期の隔離は不可欠だとはいえ、長期の孤立主義政策は経済の崩壊につながるだけで、真の感染症対策にはならない。むしろ、その正反対だ。感染症の大流行への本当の対抗手段は、分離ではなく協力なのだ。

 感染症は、現在のグローバル化時代のはるか以前から、厖大ぼうだいな数の人命を奪ってきた。14世紀には、飛行機もクルーズ船もなかったというのに、黒死病(ペスト)は10年そこそこで東アジアから西ヨーロッパへと拡がり、ユーラシア大陸の人口の四半分を超える7500万~2億人が亡くなった。イングランドでは、10人に4人が命を落とし、フィレンツェの町は、10万の住民のうち5万人を失った。

 1520年3月、フランシスコ・デ・エギアという、たった1人の天然痘ウイルス保有者がメキシコに上陸した。当時の中央アメリカには電車もバスもなければ、ロバさえいなかった。それにもかかわらず、天然痘は大流行し、12月までに中央アメリカ全域が大打撃を受け、一部の推定によると、人口の3分の1が亡くなったとされている。

 1918年には、ひどい悪性のインフルエンザウイルスが数か月のうちに世界の隅々まで拡がり、5億もの人が感染した。これは当時の人口の4分の1を超える。インドでは人口の5%、タヒチ島では14%、サモア諸島では20%が亡くなったと推定されている。このパンデミック(世界的大流行)は、1年にも満たぬうちに何千万(ことによると1億)もの人の命を奪った。これは、4年に及ぶ第1次世界大戦の悲惨な戦いでの死者を上回る数だ。

 1918年以来の100年間に、人口の増加と交通の発達が相まって、人類は感染症に対してなおさら脆弱になった。中世のフィレンツェと比べると、東京やメキシコシティのような現代の大都市は、病原体にとってははるかに獲物が豊富だし、グローバルな交通ネットワークは今日、1918年当時よりもずっと高速化している。ウイルスは、24時間もかからないでパリから東京やメキシコシティまで行き着ける。したがって私たちは、致死性の疫病えきびょうが次から次へと発生する感染地獄に身を置くことを覚悟しておくべきだった。

 ところが実際には、感染症の発生率も影響も劇的に減少した。エイズやエボラ出血熱などの恐ろしい感染爆発はあったものの、21世紀に感染症で亡くなる人の割合は、石器時代以降のどの時期と比べても小さい。これは、病原体に対して人間が持っている最善の防衛手段が隔離ではなく情報であるためだ。人類が感染症との戦いに勝ち続けてきたのは、病原体と医師との間の軍拡競争で、病原体がやみくもな変異に頼っているのに対して、医師は情報の科学的分析を拠り所としているからにほかならない。

 14世紀に黒死病が猛威を振るったときには、何が原因で、どんな手が打てるのか、人々は見当もつかなかった。近代以前、人類はたいてい病気を、怒れる神や悪意に満ちた魔物や汚い空気のせいにし、細菌やウイルスが存在するなどとは考えもしなかった。天使や妖精がいると信じていたものの、たった一滴の水に命の略奪者の恐ろしい大軍が潜んでいようとは、想像もできなかった。したがって、黒死病や天然痘が襲ってきたとき、為政者が思いつくことと言えば、大規模な祈禱きとうの催しを行ない、さまざまな神や聖人に救いを求めることぐらいのものだった。だが、効き目はなかった。それどころか、大勢の人が集まって祈りを捧げると、集団感染を招くことが多かった。

 20世紀には、世界中の科学者や医師や看護師が情報を共有し、力を合わせることで、病気の流行の背後にあるメカニズムと、大流行を阻止する手段の両方を首尾良く突き止めた。進化論は、新しい病気が発生したり、昔からある病気が毒性を増したりする理由や仕組みを明らかにした。遺伝学のおかげで、現代の科学者たちは病原体自体の「取扱説明書」を調べることができるようになった。中世の人々が、黒死病の原因をついに発見できなかったのに対して、科学者たちはわずか2週間で新型コロナウイルスを見つけ、ゲノムの配列解析を行ない、感染者を確認する、信頼性の高い検査を開発することができた。

 感染症の大流行の原因がいったん解明されると、感染症との戦いははるかに楽になった。予防接種や抗生物質、衛生状態の改善、医療インフラの充実などのおかげで、人類は目に見えない襲撃者よりも優位に立った。1967年には依然として、1500万人が天然痘にかかり、そのうち200万人が亡くなった。だが、その後の10年間に天然痘の予防接種が世界中で推進されてこの対抗策は大成功を収め、1979年には世界保健機関が、人類の勝利と天然痘の根絶を宣言した。そして2019年には、天然痘にかかったり、天然痘で命を落としたりした人は、1人としていなかった。

 この歴史は、現在の新型コロナウイルス感染症について、何を教えてくれるのだろうか?

 第一に、国境の恒久的な閉鎖によって自分を守るのは不可能であることを、歴史は示している。グローバル化時代のはるか以前の中世においてさえ、感染症は急速に広まったことを思い出してほしい。だから、たとえ国際的なつながりを1348年のイングランドの水準まで減らしたとしてもなお、不十分だろう。隔離によって本当に自分を守りたければ、中世にさかのぼってもうまくいかない。完全に石器時代まで戻る必要がある。だが、そんなことが可能だろうか?

 第二に、真の安全確保は、信頼のおける科学的情報の共有と、グローバルな団結によって達成されることを、歴史は語っている。感染症の大流行に見舞われた国は、経済の破滅的崩壊を恐れることなく、感染爆発についての情報を包み隠さず進んで開示するべきだ。一方、他の国々はその情報を信頼できてしかるべきだし、その国を排斥したりせず、自発的に救いの手を差し伸べなくてはいけない。現時点で、中国は新型コロナウイルスについて重要な教訓の数々を世界中の国々に伝授できるが、それには高度な国際的信頼と協力が求められる。

 国際協力は、効果的な検疫を行なうためにも必要だ。隔離と封鎖は、感染症の拡大に歯止めをかける上で欠かせない。だが、国家間の信頼が乏しく、各国が自力で対処せざるをえないと感じていたら、政府はそのような思い切った対策の実施をためらう。もし国内で新型コロナウイルスの感染者が100人見つかったら、ただちに都市や地方をまるごと封鎖するだろうか? それはおおむね、他国に何が期待できるか次第だ。自国の都市を封鎖すれば、経済の崩壊を招きかねない。そのときには他国が援助してくれるだろうと思っていれば、封鎖のような大胆な措置も取りやすくなる。だが、他国に見捨てられると考えていれば、おそらく躊躇し、手遅れになるだろう。

 こうした感染症について人々が認識するべき最も重要な点は、どこであれ1国・・における感染症の拡大が、全人類・・・を危険にさらすということだ。それは、ウイルスが変化するからだ。コロナのようなウイルスは、コウモリなどの動物に由来する。それが人間に感染すると、当初は、人間という宿主しゅくしゅにはうまく適応していない。だが、人間の体内で増殖しているうちに、ときおり変異を起こす。ほとんどの変異は無害だ。だが、たまに変異のせいで感染力が増したり、人間の免疫系への抵抗力が強まったりする。そして、このウイルスの変異株が人間の間で今度は急速に広まる。たった1人の人間でも、何兆ものウイルス粒子を体内に抱えている場合があり、それらが絶えず自己複製するので、感染者の1人ひとりが、人間にもっと適応する何兆回もの新たな機会をウイルスに与えることになる。個々のウイルス保有者は、何兆枚もの宝くじの券をウイルスに提供する発券機のようなもので、ウイルスは繁栄するためには当たりくじを1枚引くだけでいい。

 これはただの臆測ではない。リチャード・プレストンは著書『レッドゾーンの危機(Crisis in the Red Zone)』で2014年のエボラ出血熱の感染爆発における、まさにそうした一連の出来事を描き出している。この感染爆発のきっかけは、コウモリから人間へのエボラウイルスの感染だった。感染者は重症になったが、ウイルスは依然として人体よりもコウモリの体内での生息に適応していた。エボラウイルスが比較的稀な病気から猛威を振るう感染症に変化したのは、西アフリカのマコナ地区のどこかで、たった1人に感染したあるエボラウイルスの、たった1つの遺伝子の中で起こった、たった1度の変異のせいだった。この変異のおかげで、「マコナ株」と呼ばれるエボラウイルスのこの変異株は、人間の細胞のコレステロール輸送体に結びつくことができるようになった。こうして、この輸送体はコレステロールの代わりにエボラウイルスを細胞内に引き入れ始めた。この新しいマコナ株は、人間への感染性が4倍も高まった。

 みなさんがこの文章を読んでいる間にも、テヘランかミラノか武漢の誰かに感染した新型コロナウイルスの、たった1つの遺伝子の中で、それに似た変異が起こりつつあるかもしれない。もしそれが本当に起こっているとしたら、それはイラン人やイタリア人や中国人だけではなく、みなさんの命にとっても直接の脅威となる。新型コロナウイルスにそのような機会を与えないことは、全世界の人にとって共通の死活問題なのだ。そしてそれは、あらゆる国のあらゆる人を守る必要があることを意味する。

 1970年代に人類が天然痘を打ち負かすことができたのは、すべての国のすべての人が天然痘の予防接種を受けたからだ。たとえ1国でも国民に予防接種を受けさせることを怠っていたら、人類全体を危機に陥れていただろう。天然痘ウイルスがどこかに存在して変化を続けていたら、いつでもあらゆる場所に拡がりうるからだ。

 ウイルスとの戦いでは、人類は境界を厳重に警備する必要がある。だが、それは国どうしの境界ではない。そうではなくて、人間の世界とウイルスの領域との境界を守る必要があるのだ。地球という惑星には、無数のウイルスがひしめいており、遺伝子変異のせいで、新しいウイルスがひっきりなしに誕生している。このウイルスの領域と人間の世界を隔てている境界線は、ありとあらゆる人間の体内を通っている。もし危険なウイルスが地球上のどこであれ、この境界をどうにかして通り抜けたら、ヒトという種しゅ全体が危険にさらされる。

 過去1世紀の間、人類はかつてないほどまでこの境界の守りを固めてきた。近代以降の医療制度は、この境界にそびえる壁の役割を果たすべく構築され、看護師や医師や科学者は、そこを巡回して侵入者を撃退する守備隊の務めを担っている。ところが、この境界のあちこちで、かなりの区間が情けないほど無防備のまま放置されてきた。世界には、基本的な医療サービスさえ受けられない人が何億人もいる。このため、私たち全員が危うい状況にある。健康と言えば国家の単位で考えるのが当たり前になっているが、イラン人や中国人により良い医療を提供すれば、イスラエル人やアメリカ人も感染症から守る役に立つ。この単純な事実は誰にとっても明白であってしかるべきなのだが、不幸なことに、世界でもとりわけ重要な地位を占めている人のうちにさえ、それに思いが至らない者がいる。

 今日、人類が深刻な危機に直面しているのは、新型コロナウイルスのせいばかりではなく、人間どうしの信頼の欠如のせいでもある。感染症を打ち負かすためには、人々は科学の専門家を信頼し、国民は公的機関を信頼し、各国は互いを信頼する必要がある。この数年間、無責任な政治家たちが、科学や公的機関や国際協力に対する信頼を、故意に損なってきた。その結果、今や私たちは、協調的でグローバルな対応を奨励し、組織し、資金を出すグローバルな指導者が不在の状態で、今回の危機に直面している。

 2014年にエボラ出血熱が大流行したときには、アメリカはその種の指導者の役をこなした。2008年の金融危機のときにも、グローバルな経済破綻を防ぐために、率先して十分な数の国々を結束させ、同じような役目を果たした。だが近年、アメリカはグローバルなリーダーの役を退いてしまった。現在のアメリカの政権は、世界保健機関のような国際機関への支援を削減した。そして、アメリカはもう真の友は持たず、利害関係しか念頭にないことを全世界に非常に明確に示した。そして、新型コロナウイルス危機が勃発したときには傍観を決め込み、これまでのところ指導的役割を引き受けることを控えている。たとえ最終的にリーダーシップを担おうとしても、現在のアメリカの政権に対する信頼がはなはだしく損なわれてしまっているため、進んで追随する国はほとんどないだろう。「自分が第一ミー・ファースト」がモットーの指導者に、みなさんは従うだろうか?

 アメリカが残した空白は、まだ他の誰にも埋められていない。むしろ、正反対だ。今や外国人嫌悪と孤立主義と不信が、ほとんどの国際システムの特徴となっている。信頼とグローバルな団結抜きでは、新型コロナウイルスの大流行は止められないし、将来、この種の大流行に繰り返し見舞われる可能性が高い。だが、あらゆる危機は好機でもある。目下の大流行が、グローバルな不和によってもたらされた深刻な危機に人類が気づく助けとなることを願いたい。

 顕著な例を1つ挙げよう。新型コロナウイルスの大流行は、EU(欧州連合)が近年失った各国民の支持を再び獲得するまたとない機会になりうる。EUのなかでも比較的恵まれている国々が、大きな被害が出ている国々に、資金や機器や医療従事者を迅速かつ惜しみなく送り込めば、どれだけ多くの演説をもってしても望めないほど効果的に、ヨーロッパの理想の価値を立証できるだろう。逆に、もし各国がそれぞれ自力で対処せざるをえなければ、今の大流行はヨーロッパ統合の終焉を告げる弔いの鐘を鳴らすことになりかねない。

 今回の危機の現段階では、決定的な戦いは人類そのものの中で起こる。もしこの感染症の大流行が人間の間の不和と不信を募らせるなら、それはこのウイルスにとって最大の勝利となるだろう。人間どうしが争えば、ウイルスは倍増する。対照的に、もしこの大流行からより緊密な国際協力が生じれば、それは新型コロナウイルスに対する勝利だけではなく、将来現れるあらゆる病原体に対しての勝利ともなることだろう。

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『サピエンス全史』のユヴァル・ノア・ハラリ氏、 “新型コロナウィルス”についてTIME誌に緊急寄稿!

ユヴァル・ノア・ハラリ


著作累計が2,000万部を突破した世界的歴史学者・哲学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏は、2020年3月15日付アメリカTIME誌に「人類はコロナウイルスといかに闘うべきか――今こそグローバルな信頼と団結を(原題:In the Battle Against Coronavirus, Humanity Lacks Leadership)」と題した記事を寄稿しました。

新型コロナウイルスと対峙する上での示唆に富んだハラリ氏のメッセージを、氏の著作全てを訳した柴田裕之氏が新たに訳しおろし、ハラリ氏並びにTIME誌の了解を得て、緊急全文公開します!

現代における「知の巨人」が考える、“今、人類に本当に必要なこと”、“真の意味での新型コロナウィルスに対する勝利”とは何か。是非ご一読下さい。
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ETV特集「緊急対談 パンデミックが変える世界~海外の知性が語る展望~」( 2020年4月11日 放送)


新型コロナ以後の「世界情勢」が語られる!

3人の話の趣旨で共通していたのは下記の点です
・各国の協力体制
・人類の連帯
・利己主義ではなく他を大事にする姿勢
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また、諸外国の状況を「日本」にてらしあわせてみると面白い?(コワイ?)
「教育」と「信頼できる政府」が必要だと・・ 「ハンガリー」を見ようと、、
「科学的権威のことは信じて従え」と「政権のことは批判的に監視しろ」
「世界が連帯し、科学を信頼すれば、乗り切れる。人類が進んだ種になれる。もし独裁や孤立を選べば悲惨なことになる。」

国際政治学者 イアン・ブレマー
(私の認識は、「10大リスク」でも有名な人)
歴史学者 ユヴァル・ノア・ハラリ
(私の認識は、『サピエンス全史』の人)
経済学者・思想家 ジャック・アタリ
(私の認識は、 昔、フランスの思想家として、ジル・ドゥルーズ、ジャック・デリダ、ジャック・アタリ等を読んだ!)
▶「市民に課せられた2つの務め」とは…

また、それぞれの知識人の方が最後に「人々への提言」を語りますが、ここに知識人の言葉が集約されています。一人目のイアン・ブレマーさんが「犬を飼うべきだ」と語ったところに「へ!?」と拍子抜けしましたが、その意図がすぐあとに語られるので、そこにも注目です。番組を見終わったあと、3人のインタビューを参考に、どんな情報を集め、どんな行動をとっていくのか考えてみるのもいいかもしれません。

動画 ETV特集「緊急対談 パンデミックが変える世界~海外の知性が語る展望~」


NHK+ アプリという「手段」も

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感動! ETV特集「緊急対談 パンデミックが変える世界~海外の知性が語る展望~」( 2020年4月11日 放送) メモ



国際情勢(10大リスク) 米政治ドラマが今年最大のリスク-ユーラシア・グループのリスク番付 (国際政治学者 イアン・ブレマー)


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特に、「ジャック・アタリ」のメモ
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「次の2か月から3か月の間に私たちは世界を根底から変える壮大な社会的・政治的実権を行うことになるでしょう。」
「この緊急事態において自由市場にだけ頼ることができないのは誰の目にも明らかです。一部の国は経済システムと雇用システムをより良いものに作り変えるいい機会となりうるでしょう。私たちは選択肢が数多くあることを理解すべきです。そしてそれらは政治的選択です。これは事前に決まっていることではありません。ウイルスが私たちに替わって決断するわけでもありません。それは政治家の仕事であり、政治家を監視する市民の仕事です。」
「メディアと一般の人たちはウイルスの流行にだけ関心を持つべきではないと言いたいです。「今日は感染者は何人だった」とか「病院に何台の人工呼吸器がある」といった話は重要ですが、政治状況にも焦点を当てるべきです。」
「全体主義的な体制が台頭する危険性があります。ハンガリーが良い例です。形式的にはハンガリーは民主国家ですがオルバン政権は独裁的ともいえる権力を握りました。それも無期限の独裁的権力です。緊急事態がいつ終わるかはオルバン首相が決めます。ほかの国にも同様の傾向があります。非常に危険です。通常、民主主義は平時には崩壊しません。崩壊するのは決まって緊急事態の時なのです。」
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が、ちょっと疲れたので、大事な後半パートだけ。

道傳さん質問
「緊急事態が民主主義に与えるインパクトについてお尋ねします。緊急時にはたとえ民主的な指導者であっても前例のない権力を手に入れることがあり、大衆も厳しい政策を支持することがあります。それは民主主義にとってどのような意味を持つのでしょうか」

アタリ氏
「確かに安全か自由かという選択肢があれば、人は必ず自由ではなく安全を選びます。それは強い政府が必要とされていることを意味します。しかし強い政府と民主主義は両立しうるものです。第二次世界大戦のさなかのイギリスが良い例です。強力な政府を持ちながら民主主義でもありました。

道傳さん
「このパンデミックの中で差別や分断が以前より目立ってきているのではないかと懸念しています。それには同意しますか」

アタリ氏
「はい。連帯のルールが破られる危険性が極めて高い。つまりは利己主義です。経済的な孤立主義が高まる危険もあります。他の国に依存しすぎるべきでないというのは一面の真実です。たとえば「どうかエチオピアにマスクを売ってくれ」と中国に懇願しなくてもすむように。しかし、だからといって、国境を閉ざしてしまうべきではありません。私たちはもっとバランスの取れた連帯を必要としているのです。」

「Altruism 利他主義」映像にナレーション

「今こそ連帯が必要だというアタリ氏は、これまで利他主義という思想を主張してきました。今回の危機を受けて改めて利他主義への転換を広く呼び掛けています。「パンデミックと言う深刻な危機に直面した今こそ「他者のために生きる」という人間の本質に立ち返らねばならない。協力は競争よりも価値があり、人類は一つであることを理解すべきだ。利他主義という理想への転換こそが人類サバイバルのカギである。」
「Cheers for Life 生命 万歳」「Think and Live Positive  ポジティブに考えて行きよう」という、アタリ氏のブログ表紙科増の映像を背景にナレーション
「危機的な状況の中でもアタリ氏の選ぶ言葉はあくまで前向きです。頻繁に使われるポジティブという言葉は、利他主義と並ぶキーワードです。」

道傳さん
「あなたのブログほずっと読んでいますが、その一貫した楽観主義が印象に残りました。例えば『生命万歳!』とか『ポジティブに考えて生きよう』とか。そのポジティピズムや楽観主義はどこから来るのですか」
アタリ氏
「まず、ポジティピズムはオプティミズム(楽観主義)とは異なります。たとえば、観客として試合を見ながら「自分のチームが勝ちそうだな」と考えるのが楽観主義です。一方、ボジティミズムは、自らが試合に参加し「うまくプレイできればこの試合に勝てるぞ」と考えることです。そういう意味では私はポジティブであると言えるでしょう。私は人類すべてがこの戦いに勝てると考えています。自分たちの安全のために最善を尽くし、世界規模で経済を変革させていくことができればきっと勝てるでしょう。今の状況は私が「ポジティブ経済」と呼ぶものに向かうとても良いチャンスだと思っています。ポジティブ経済とは、長期的な視野に立ち、私が「命の産業」と呼ぶものに重点をおく経済です。生きるために必要な、食料、医療、教育、情報、研究、イノベーション、デジタルなどの産業です。生きるのに本当に必要なものに集中することです。」

道傳さん
「共感と利他主義について語っておられますが、人々がパニックになって買占めを行ったり、国境を封鎖したりする中で、利他主義とはどのような意味を持つのでしょうか。あなたのことを「無私の聖人」のようにいう人もいるのでは」

アタリ氏
「いえいえ、利他主義は合理的利己主義にほかなりません。自らが感染の脅威にさらされないためには他人の感染を確実に防ぐ必要があります。利他的であることは、ひいては自分の利益となるのです。また、他の国々か感染していないことも自国の利益になります。たとえば日本の場合も世界の国々が栄えていれば、市場が拡大し、長期的にみると国益につながりますよね」

道傳さん
「利他主義とは他者の利益のためにすべてを犠牲にすることではなく他者を守ることこそが我が身を守ることであり家族コミュニティ 国 そして人類の利益にもつながるのですね」

アタリ氏
「その通りです。利他主義とは最も合理的で自己中心的な行動なのです。今回の危機は乗り越えられると思います。薬やワクチンが見つかるかはわかりませんが、数か月の間に打ち勝てるでしょう。医師ではないので何か月かかるかはわかりませんが。ただし、長期的にみるとこのままでは勝利は望めません。経済を全く新しい方向に設定しなおす必要があるのです。戦時中の経済では自動車から、爆弾や戦闘機へ企業は生産を切り替えなければなりません。今回も同じように移行すべきです。ただし、爆弾や武器を生産するのではありません。医療機器、病院、住宅、水、良質な食糧などの生産を長期的に行うのです。多くの産業で大規模な転換が求められます。はたして私たちにできるかはわかりません。パンデミックの後、人々が以前のような行動様式に戻ってしまうかもしれませんから」

道傳さん
「歴史を見ると、人類は恐怖を感じるときのにのみ、大きく進化すると以前おっしゃっていました。私たちは、まさにいま進化するためにこれまでの生き方を見直すべきと思いますか」
アタリ氏
「まさしくそう思います。前身するために恐怖や大惨事が必要だというのでもありません。私は破滅的な状況は望みません。むしろ魔法で今すぐにでもパンデミックが終息してほしいです。しかし良き方向に進むためには今の状況をうまく生かすしかありません。利他的な経済や社会、つまり私が「ポジティブな社会」「共感のサービス」と呼ぶ方向に向かうために。しかし人類は未来について考える力がとても乏しく、また忘れっぽくもあります。問題を引き起こしている物事を忘れてしまうことも多いのです。過去の負の遺産を嫌うため、それが取り除かれると、これまで通りの生活に戻ってしまうのです。人類が今、そのような弱さを持たないよう願っています。私たち全員が次の世代の利益を大切にする必要があります。それがカギです。誰もが、親として、消費者として、労働者として、慈善家として、そしてまた一市民として投票を行うときにも、次世代の利益となるよう行動をとることができれば、それが希望となるでしょう。」

アタリ氏の、知的で深い洞察と、未来に向けたポジティブな態度、語り口、もう素敵としか言いようがない。120%賛成できる。私と妻が、原発事故後考えて生きたこと、こう行きたいと思ってきたことのすべてを、このインタビューで、アタリ氏が語ってくれていると思いました。アタリ氏最高。

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ハラリ氏の母国イスラエルのネタニエフ首相の支持勢力が総選挙で過半数を割り、暫定首相になったネタニエフ氏は、感染防止対策を理由に野党が多数を占める議会の閉会を命じようとした。この動きに、ふだんは政治的発言をしないハラリ氏が政治的意見を表明。「コロナは民主主義を殺した。ネタニエフは選挙に敗れたのに立法府を閉じ市民に家に留まるよう緊急命令を発した。これは独裁政権だ。これにネタニエフの息子ヤイールが強く反発。「あなたは専門分野では尊敬されているかもしれないが政治に関しては完全に愚かだ。あなたは嘘つきだ。そしてあなたの国イスラエルを憎んでいる」結局、国民から大きな反発を受け、ネタニエフ氏は議会の閉鎖を断念した。
ハラリ氏インタビューつづき
「この時は非常に危険な瞬間でした。ウイルスの流行と戦うという口実を使った政治的クーデターでした。実際、首相は「議員の健康を守るために議会を閉鎖する」と言いました。とんでもない話です。幸いにも国民やメディア 対立する政党から大きな反発があって首相は閉鎖を撤回しました。いま議会は再開され、非常時を乗り切るための大連立工作が進んでいます。しかし一時はイスラエルがハンガリーのようなコロナ独裁国家になる危険もありました。コロナウイルスと戦うという口実の独裁制です。一人の人物に強大な権力を与えると、その人物が間違った時にもたらされる結果ははるかに重大なものになります。独裁者は効率が良いし迅速に行動できます。誰とも相談する必要がないからです。しかし間違いを犯して決して認めません。間違いを隠蔽します。メディアをコントロールしているので隠蔽するのが簡単だからです。ほかの手法を試すのでなく間違いをさらに重ねます。そして責任を他の人に転嫁します。そうやってますます権力を強化していきます。そしてさらに間違いを重ねていくのです。民主主義に大切なのは政府が間違いを起こしたときに自らそれを正すこと。そして政府が間違いを正そうとしない時に、政府を抑制する力を持つ別の権力が存在するということです。イスラエルでは1948年(第一次中東戦争)に出された緊急事態の宣言がまだ続いています。多くの緊急命令がいまだに法的に有効です。緊急措置が適用されるのは危機の間で、危機が去れはいつも通りに戻るものと思いがちですがそれは幻想です。緊急時だからこそ民主主義が必要です。チェック&バランスが維持されなければならない。」
道傳さん質問「イスラエルは緊急事態の時に情報をどう使っているのでしょうか。イスラエルは治安機関に監視技術の運用を容認していますね。」
ハラリ氏「大変憂慮すべき事態だと思います。特にそれを行っているのが治安機関だからです。私は監視を支持しますが、このタイプマ監視は警察や秘密警察に依存しないように神経をとがらせなければなりません。それは独立した保健部門の機関が実施すべきです。警察とのつながりのない機関です。」
番組説明VTR「新型コロナ感染拡大を防ぐため、イスラエル政府が利用したのがテロリストの行動を追跡するために国中に張り巡らした世界最先端の監視システム。感染者の携帯電話が保健省から警察に送られます。警察は位置情報から過去の行動履歴を割り出します。さらにその人物の近くにいた人々を割り出し、接触者を特定していきます。保健省が必要と判断すれば警察は接触者を収容し、隔離することもできるのです。」
ハラリ氏インタビュー。「私は監視に反対してはいません。むしろ感染拡大を食い止めるために新しい技術を利用することには賛成しています。しかし監視は政府だけではなく一般市民にも二つの方法で力を与えるべきだと思います。第一に私自身や他の人の身体の状態に関するデータを政府が集めて保管することは許されません。私には自分の健康状態に関するデータにアクセスする権利が与えられるべきです。私自身の健康管理についてよりよい判断を下すためにです。また自分の健康データにアクセスできれば政府が採用している政策が有効か否かを自分の身をもって試すことができます。これがイランのような全体主義国家だと死者の数や今回感染拡大に関して国が信用に足るデータを公表しているかどうかさえ国民は知る由もありません。データは透明性を確保されるべきです。そしてもうひとつ、政府の決定にも透明性がなければいけません。私は自国の政府の決定を監視できなくてはなりません。アメリカの交付金の分配状況を例にとりましょう。政府は先日2.2兆ドルの救済策を決めました。ではその交付金を受け取るのは誰でしょう。私がもしアメリカの市民権を持っていたら、こうした金がどこに行くのか。この金をもらえるのは誰で、もらえないのは誰なのかを監視する力が欲しいと思うでしょう。ですから監視は両方向であるべきです。これが市民が持つべき力です。このような情報にアクセスできれば市民はより大きな力を持つというわけです。」

道傳さん質問「あなたは人々のエンパワーについて話されました。今の状況は市民につきつけらけた試練だと思います。市民の側にはどのような行動が求められますか。何かを待っている余裕はないはずです。」

ハラリ氏
「確かにこのような状況では市民にも多くの責任が生じます。ひとつは情報や行動のレベルです。信ずるべき情報を慎重に吟味し科学に基づいた情報を信頼すること。そして科学的裏付けのあるガイドラインを実行すること。市民が科学的な指針に従えば、緊急時に独裁的に手法を取る必要が少なくなります。これは非常に重要です。私たち一人一人の務めは、現在の状況や誰を信じるべきかについて知識をつけ、大学や保健省など信頼に足る組織から出された指針を忠実に守り、陰謀論の罠に陥らないことです。この危機的状況の中で市民に課せられた2つ目の務めは、政治的状況に目を光らせておくということです。その決定に参加し政治家たちの行動を監視することがとても重要です。
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コロナウイルス感染について、マスコミで、インターネットで様々な情報が行きかっています
参考になったり、心が動かされる情報がたくさんありますが、聞き飽きた、どうでもいい情報も溢れかえっています

そんな中で、昨夜11時からのNHK・ETV番組が秀逸でした

緊急対談 「パンデミックが変える世界」-海外の知性が語る展望-
スカイプを使って緊急に英語でインタビューする形です
登場人物は下記の3人で、特に印象に残った点を箇条書きにします

■イアン・ブレマー  アメリカの国際政治学者、著名なシンクタンクの責任者
・指導者無き世界(Gゼロの世界)が漂流を始める時期を迎えており、世界秩序が激変する
・経済だけでなく政治の世界も激変する

・今回は、これまでと違って、各国がバラバラに対応しようとしている
・アメリカは少しもリーダーシップを発揮していない

・GDPの10%を使うことができるアメリカや日本などの先進国は乗り切ることができる
・そうでない大多数の国は壊滅的な被害を受け、格差が増大する
・医療崩壊や貧困がテロや、政権崩壊などの大混乱をもたらし、世界は不安定になる

・日常生活では、いつもと違うことをするのがお勧め(瞑想をする、犬を飼うなど)

■ユバル・ノア・ハラリ イスラエルの歴史学者、世界的ベストセラー作家
・この2-3か月のうちに、人類は世界を根底から変える壮大な社会的・政治的実験を行うことになる

■ジャック・アタリ フランスの経済学者、思想家(EU発足の陰の立役者と言われている)
・危機をチャンスに変えることが大切
・経済を全く新しい方向に変える必要がある


3人の話の趣旨で共通していたのは下記の点です
・各国の協力体制
・人類の連帯
・利己主義ではなく他を大事にする姿勢

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 新型コロナによるパンデミックの危機は世界をどう変えるのか、歴史学、政治学、経済学の各分野で独自の思想を展開する世界の知識人に緊急インタビューした特番です。登場する知識人は、「ニューヨークの国際政治学者、イアン・ブレマー」「世界的ベストセラー“サピエンス全史”“ホモ・デウス”の著者、イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ」「フランスの経済学者・思想家、ジャック・アタリ」の3人です。

「100分de名著」を見たあと、現実世界の状況をよく知りたいとかき立てられ、この危機を乗り越える知恵を授けていただきたいと思い、この番組をじーっと見てしまいました。
特に印象的だったのが、イスラエルの歴史学者とフランスの経済学者・思想家が、新型コロナとの戦いを口実にその国のトップの権限が拡大し“独裁国”になる危機を語っていたこと。「じゃあ、どうすりゃいいんだー!」と思いますが、ユヴァル・ノア・ハラリさんが「市民に課せられた2つの務め」を語るので、ぜひ番組をチェックしてみてください!
▶「市民に課せられた2つの務め」とは…

また、それぞれの知識人の方が最後に「人々への提言」を語りますが、ここに知識人の言葉が集約されています。一人目のイアン・ブレマーさんが「犬を飼うべきだ」と語ったところに「へ!?」と拍子抜けしましたが、その意図がすぐあとに語られるので、そこにも注目です。番組を見終わったあと、3人のインタビューを参考に、どんな情報を集め、どんな行動をとっていくのか考えてみるのもいいかもしれません。




動画
https://www.dailymotion.com/video/x7t9vvs

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